社労士・兵藤恵昭の独り言

団塊世代の社会保険労務士・兵藤恵昭のブログです。兵藤社会保険労務士事務所・内容は雑多です

人事

飲酒運転で懲戒免職、30年間勤務退職金ゼロ・血も涙もない最高裁判決

飲酒運転で懲戒免職となった宮城県立高校の元教諭が、退職金を全額不支給とした県の処分を取り消すよう求めた訴訟の上告審判決が2023年6月27日、最高裁第3小法廷であった。長嶺安政裁判長は3割相当を支給すべきだとした二審判決を変更し、県の処分を妥当と…

性同一性障害者のトイレ使用制限は違法!最高裁判決

(最高裁は違法と判断した!) 経済産業省で働く性同一性障害の職員が、トイレの使用制限を不服として訴えた裁判で、最高裁判所第三小法廷(今崎幸彦裁判長)は使用制限を違法と判断した。二審の東京高等裁判所は、経産省には他の職員が持つ性的な不安も考慮…

「三位一体労働市場改革の論点案」

2023年4月12日、労働移動促進による経済成長を目指す内閣官房・新しい資本主義実現本部事務局が『三位一体労働市場改革の論点案』を公表した。 その後、今後の労働政策の方向性を示した報告書が、労働政策審議会労働政策基本部会より発表された。これによっ…

今年の春闘・賃上げ、中小企業まで波及するか?

(今年の春闘の動き) 春季労使交渉の集中回答日を迎え、改めて賃上げ機運の高まりが明らかになった。 金属労協の先行大手では満額回答が続出し、賃金改善額の単純平均は8000円を超えた。 流通大手など多様な産業・業種の労組で構成する最大産別UAゼンセン…

管理監督者の残業代支払不要の要件

管理監督者については、三つの判断要素があります。 その判断基準を満たしていない場合、管理職であっても労働時間などの規定が適用され、時間外手当や休日出勤手当を支払う必要が生じます。 (判断要素とは) 経営者から管理監督、指揮命令にかかる一定の権…

中小企業2023年4月から、月60時間超の時間外割増賃金率が50%へ引き上げ!

2023年4月からは中小企業を含むすべての企業において、月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が50%となる。対応しないと法的に罰せられる可能性もあるため、各社は長時間の時間外労働を減らすために業務効率化などの対策が必要となる。 中小企業の月60時…

懲戒解雇処分該当として、支給済み退職金を返還できるか?

本件は、退職金支給後に、背信行為として懲戒解雇処分に該当したと判断し、会社が退職金返還請求をした事件である。(東京地裁・令和4年6月10日判決) (事件の概要) 本件の原告は生命保険会社(Ⅹ生命)で、被告となった元社員2名(婚姻関係あり)は、いず…

生保外交員の経費の給与天引きを違法とした判例。

営業で使用する携帯電話や訪問先に配る品などの費用を給料から天引きするのは違法であるとして、住友生命京都支社の保険外交員の50代の女性が天引き分の支払いを求めていた訴訟で、京都地裁が約35万円の支払いを命じた。 同社では顧客に保険商品を紹介す…

ジョブ型雇用制は日本で可能か?

「人事の組み立て・脱日本型雇用のトリセツ」海老原嗣生著・日経BPマーケティング2021年4月発行 著者は1964年生まれ、リクルートエイブリック入社後、人事コンサル会社を設立した雇用ジャーナリストである。 2020年1月、経団連は報告書を発表「日本型雇用制…

ジョブ型雇用とは何か?

「ジョブ型雇用社会とは何か・正社員体制の矛盾と転機」濱口桂一郎著・岩波新書2021年9月発行 著者は1958年生まれ、労働省入省、現・労働政策研究研修機構労働政策研究所長。 著者は、2009年「新しい労働社会・雇用システムの再構築」岩波新書で、日本労働社…

再考「日本においてジョブ型雇用は可能か?」

雑誌・エコノミスト今週号に神戸大学准教授・江夏幾太郎氏が「ジョブ型に向けた人事改革のカギ」記事が掲載されている。 ジョブ型人事のポイントは「なにができるか?」でなく、「なにをさせるか?」に着目する点にあると言う。ジョブ型の人事施策の設計・運…

マンションの「二つの老い」

「60歳からのマンション学」日下部理絵著・講談社+α新書2022年4月発行 著者はマンション管理士・管理業務主任者試験合格、管理会社勤務を経て、現・マンショントレンド評論家。「負動産マンションを富動産に変えるプロ技」の著書がある。 最近、子供が自立…

時間外・深夜・休日労働の時間計算における端数処理

2022年6月、外食産業大手「すかいらーくホールディング」のパート・アルバイト従業員の賃金計算で「5分未満切り捨て処理していた」ことが問題となった。 会社側は労基法違反を認め、今後は1分単位に変更、約9万人の2年間の未払い分、16~17億円を支払うと報…

コロナで働き方は変わったか?「仕事から見た2020年」

「仕事から見た2020年・結局、働き方は変わらなかったのか?」玄田有史・萩原牧子編・慶應大学出版会2022年3月発行 編者・玄田は1964年生まれ東大教授「人手不足なのになぜ賃金が上がらないのか」の著書がある。萩原は1975年生まれリクルートワークス研究所…

働かないオジサンが悪いのか?働かせない経営者が悪いのか?

「働かないおじさんが御社をダメにする・ミドル人材活躍のための処方箋」白河桃子著・PHP新書2021年3月発行 著者は1961年生まれ、住友商事入社後、リーマンブラザーズ、クレティ・スイス等外資系企業に勤務したジャーナリストである。 著者は、今回のコロナ…

いじめ、嫌がらせは職場体質に問題がある!

「大人のいじめ」坂倉昇平著・講談社新書2021年11月発行 著者は1983年生まれ、NPO法人POSSEの理事、ハラスメント対策専門家である。「ブラック企業VSモンスター消費者」の著書がある。 本書は「職場いじめ」の現場報告である。著者はハラスメント現場を長く…

労働運動が犯罪行為になる?

「賃金破壊・労働運動を犯罪にする国」竹信三恵子著・旬報社2021年11月発行 著者は朝日新聞記者・編集委員(労働担当)を経て、現在和光大学名誉教授。「企業ファースト化する日本・虚妄の働き方改革を問う」岩波書店の著書がある。 本書は、産別労組である…

格差克服の「社会エレベーター」とは何か?

2022年1月5日日経新聞に「成長の未来図・格差克服の社会エレベーター」の記事が掲載された。翌日「羽鳥慎一モーニングショー」でも玉川氏が話題とした。記事によると 「社会エレベーター」とはOECD(経済協力開発機構)の指標の一つ。社会の最貧層(全体の下…

貞観政要・最高のリーダー論

「座右の書・貞観政要・中国古典に学ぶ世界最高のリーダー論」出口治明著・角川新書2019年12月発行 著者は1948年生まれ、日本生命出身でライフネット生命創業者、立命館アジア太平洋大学学長、読書家として有名。 「貞観政要」は、唐の第二代皇帝・太宗・李…

三国志に人事管理を学ぶ

「人事の三国志・変革期の人事、人材登用、立身出世」渡邉義浩著・朝日選書2019年6月発行 著者は1962年生まれ、古典中国学専攻の文学者。古代中国の君主と官僚・名士とのせめぎ合い、相互制御の君主制を「名士論」と名付け、古代君主制の特殊性を特徴つける…

テレワークは定着するか?

「誰のためのテレワーク?・近未来社会の働き方と法」大内伸哉著・明石書店2021年5月発行 著者は1963年生まれ、神戸大学大学院法学研究科教授。AI時代の働き方と法、非正規社員改革など「働き方改革」問題に積極的に発言している。 コロナ下のテレワークは近…

これからの働き方はどうなる?

「未来の働き方を考えよう」ちきりん著・文藝春秋2013年6月発行 著者は「Chikirinの日記」で人気のブロガー。本名、顔を公表しない。国立大法学部卒後、大手証券会社入社、米国でMBA取得、外資系コンサル会社に勤務した経営コンサルタントらしい。 本書は、…

コンビニ加盟店従業員未払い賃金に対してコンビニ本部が解決金支払!

2015年9月、ローソン加盟店元従業員が未払い賃金1,300万円支払請求を提訴した。 加盟店店主は自己破産、支払能力なし。FC本部に注意義務違反により支払義務発生したという。 男性従業員は2007年、加盟店にバイトを始める。2010年、正社員になる。 店主のパワ…

昼休み時差休憩実施に労使協定締結を義務化

昼休みの時差休憩実施に労使協定締結の義務化 政府はコロナ対策での感染防止のため、昼休み時差休憩の弾力活用を進める。 昼休みの時差取得は、サービス業など業種、一斉休憩を取りずらい職種に限定されていた。 今回、労使協定締結すれば、全ての職種で適用…

雇用調整助成金の延長と助成額変更が決定した

雇用調整助成金支給は2021年4月末までが期限となっていた。 今回、4月末までの支給が4月及び5月末まで2か月延長された。 助成率および上限額が一部減額は下記のように変更となった。 (中小企業) 4月まで 全国一般原則 助成率 80% (解雇の無い企業 助成率…

正社員と非正規社員の格差

令和2年度賃金構造基本統計調査が発表された。 それによると正社員と非正規との賃金格差は男女合計で非正規は正社員の66.3%であるという。 本当だろうか?格差はもっと大きいのではないか? 男女合算平均で ①正社員男女合計 平均月間賃金 324.2千円(年齢42…

非正規労働者の解雇が増加している

最近、新聞でパート、契約社員のコロナによる雇止め失業者が10万人以上になったの記事があった。 野村総合研究所の調査によると、パート、アルバイトのうち、シフトが5割以上減少、かつ休業手当を受けていない人が増加している。解雇はしないが、実質失業状…

パート・アルバイトさんがシフト変更で離職したとき、特定理由離職者になります

新型コロナの影響でシフト減少したことにより、離職した方の雇用保険求職者給付(失業手当)は、特例として「特定理由離職者」になります。 シフト制労働者とは 勤務日数や時間がシフトにより決定される労働者です。 ①労働契約に具体的な就労日数等の定めが…

令和3年4月より改正高年齢雇用安定法が施行された。

改正高年齢雇用安定法のポイント 従来、雇用主は65歳まで雇用継続措置の「義務」があった。これに加えて、今年の4月よりは70歳まで下記の「いずれか」の雇用継続措置をとる「努力義務」が制定された。 (対象となる事業主は) ①定年を65歳以上70歳未満に定め…

成長できる中小企業に必要な人材育成法

中小企業は人材育成投入できる人員が無いのが普通です。最近は若い人材のキャリア不足が目立ちます。 大手企業も人材育成能力が低下しています。理由は製造業中心のタテ型OJTに限界があること。企業自身が人材育成に集中できる余裕がなくなっているためです…