社労士・兵藤恵昭の独り言

団塊世代の社会保険労務士・兵藤恵昭のブログです。兵藤社会保険労務士事務所・内容は雑多です

今年の春闘・賃上げ、中小企業まで波及するか?

(今年の春闘の動き)

春季労使交渉の集中回答日を迎え、改めて賃上げ機運の高まりが明らかになった。

金属労協の先行大手では満額回答が続出し、賃金改善額の単純平均は8000円を超えた。

流通大手など多様な産業・業種の労組で構成する最大産別UAゼンセンでは、翌3月16日現在の集計で正社員組合員の賃上げ分が9144円、短時間組合員は時給ベースで61.8円(制度昇給込み)の引上げとなっている。

しかし、これは大手企業、大企業中心である。全事業所数の9割、雇用者数の7割以上を占める中小企業の状況はどうだろうか?

(中小企業の動き)

内部留保、生産性に厳しい中小企業は、賃上げしたいが、ついていくものがない。取引先への価格交渉も厳しい。だが、賃引上げしなければ、人材が確保できない。苦しい展開である。

加盟単組の8割を中小労組が占めるJAMで、取引関係の実態を把握するため、昨年11月から今年1月にかけて実態調査(回答944社・事業所)を実施している。

JAM(ジャム、ものづくり産業労働組合、英語: Japanese Association of Metal, Machinery, and Manufacturing workers)とは、日本の労働組合である。

JAMは日本労働組合総連合会(連合)、全日本金属産業労働組合協議会金属労協)に加盟している。

それによると、最大の納入先企業からの売上高が全体の2割以上を占める企業は60%に上り、取引関係についても30年以上に及ぶとした企業が65%に上った。

特定の取引先に対する依存度の高さが浮かび上がる一方、3社に1社では21年度上半期以降、主要な納入先から価格引下げ要求を受けている。

価格転嫁に関しては、8割近くが協議した・応じたとするが、労務費・固定費に限ればその割合は4割に達していない。

(構造的な賃上げは可能か?)

集中回答日当日の3月15日、首相官邸で政労使の意見交換も行われ、岸田文雄内閣総理大臣が「中小・小規模企業の賃上げ実現には、労務費の適切な転嫁を通じた取引適正化が不可欠である点について、基本的に合意」と報告した。

デフレマインドの払拭、構造的賃上げを可能にするには、付加価値の増加(生産性の向上)か、売上高の上昇のどちらかが必須である。

付加価値とは粗利益を意味する。利益向上、稼ぐ力が無ければ、賃上げも一時的なものになるだろう。

(今春闘の予想)

春闘は、大手企業は定昇込みで3%台後半を見込む。中小企業は大企業並みは難しく、2%台後半だろう。どちらも前年比大幅に増加も、消費者物価上昇4%には追い付かず、実質賃金の低下は避けられない。