社労士・兵藤恵昭の独り言

団塊世代の社会保険労務士・兵藤恵昭のブログです。兵藤社会保険労務士事務所・内容は雑多です

時間外・深夜・休日労働の時間計算における端数処理

2022年6月、外食産業大手「すかいらーくホールディング」のパート・アルバイト従業員の賃金計算で「5分未満切り捨て処理していた」ことが問題となった。

会社側は労基法違反を認め、今後は1分単位に変更、約9万人の2年間の未払い分、16~17億円を支払うと報道された。

当社のアルバイト男性が「全国一般東京東部労働組合」に所属、切り捨て賃金を全従業員に支払うように団体交渉した結果である。

労働基準法は「賃金は全額支払わなくてはならない」と定める。従って「端数賃金の切り捨ては認められない。その分の賃金が支払われなければ違法となる可能性がある」が厚労省の判断である。

月単位の労働時間に対する端数処理については、基本通達がある。(昭和63.3.14 基発150号)

「その月の時間外、休日または深夜の総労働時間数に30分未満の端数がある場合は切り捨て、それ以上の端数がある場合には1時間に切り上げることは、労働基準法違反として取り扱われません。」

これは月単位の賃金で、月給制による「時間外労働時間の端数計算」に適用される。従って、日給制、時間給制に対しては適用されない。

更にこの通達は行政手続き上、労基法違反と取り扱わないと定めているだけであり、合法であるとしている訳ではない。即ち、労働基準監督署の行政手続き上、有効とするだけで、労基法で合法としていない。

端数処理は事務手続上認めるだけで、法律上は1分単位で時間外賃金も支払う必要がある。今回、すかいらーくの所定労働時間内の賃金切り捨ては、事務手続上も認められず、明らかに違法である。

当社の従業員がユニオンに加入し、団体交渉の中で今回初めて明らかになったとすれば、それはそれで問題である。

同社の顧問弁護士、担当社労士はどのようにチェックしていたのであろうか?当社のコンプライアンス体制、コーポレートガバメントに問題ありと言わざるを得ない。