著者は1958年生まれ、労働省入省、現・労働政策研究研修機構労働政策研究所長。
著者は、2009年「新しい労働社会・雇用システムの再構築」岩波新書で、日本労働社会の矛盾、その解決法としてメンバーショップ型と対となるジョブ型雇用を提起した。
しかし、ジョブ型雇用は提示した概念と似ても似つかないものとなった。本当のジョブ型とは何か?を改めて世に示したいと記述する。
ジョブ型は最初に職務があり、人は職務に付いてくる。賃金は職務に対する値段、人の能力に対する値段ではない。従って人を育てるメンバーシップ型とは全く異なる。
1995年バブル崩壊、氷河期を経て、日本雇用は少数精鋭主義、若者の非正規化が始まった。従来の業績主義が再活用される。更に企業内組合がこれを助長する。
日本の歴史は市民革命を経験していない。権力奪還、労働者権利獲得の経験もない。唯一、戦後、総評を中心とする官公庁、三池争議の産別、職別組合運動の経験があるのみである。それも国鉄解体と共にその労働運動も終了した。
メンバーシップ型雇用は企業組織と一体となった幻想共同体的組織論である。トーマス・ホッブスは「リヴァイアサン」で株式組織ほど効率的組織はないと言う。これを社会契約論で批判的に継承したのが、ロックとルソーである。
ジョブ型雇用を導入するには全面的社会構造の転換が必要となるだろう。
経営者の人事評価は能力評価ではない。当初から職務分析もない。白紙から人を育て、企業の色に染める考えである。評価も能力評価でなく、情意(やる気)評価である。
ここに成立する民主主義が真の民主主義でないのは明らかである。メンバーシップ型雇用社会の日本にジョブ型雇用を導入する困難さ改めて確認せざるを得ない。