社労士・兵藤恵昭の独り言

団塊世代の社会保険労務士・兵藤恵昭のブログです。兵藤社会保険労務士事務所・内容は雑多です

格差克服の「社会エレベーター」とは何か?

2022年1月5日日経新聞に「成長の未来図・格差克服の社会エレベーター」の記事が掲載された。翌日「羽鳥慎一モーニングショー」でも玉川氏が話題とした。記事によると

「社会エレベーター」とはOECD経済協力開発機構)の指標の一つ。社会の最貧層(全体の下位・10%以下の所得層)が平均所得に達する必要世代数(1世代は30年)の必要期間を言う。即ち、格差克服のための必要年数、困難度を示す。

中国・インド              7世代(210年)  

フランス・ドイツ            6世代(180年)

米国・英国               5世代(150年)  

日本                  4世代(180年)

フィンランド・ノルウエー・スウエーデン 3世代(90年)

デンマーク               2世代(60年)

OECD諸国平均             4.5世代(135年)

インドはカースト制があり、困難度は高い。しかしIT分野はカースト規定の適用外である。下記パラグ・アグラワル氏の例もある。インドでも格差の流動化が進む。

「IT(情報技術)の巨人を征服するインド人」。2021年11月、同国はパラグ・アグラワル氏のツイッター最高経営責任者(CEO)就任に沸いた。地方の借家で育ち、インド工科大を経てビッグテックを率いる37歳は飛躍を遂げた象徴だ。

北欧諸国は格差克服の困難度が低い。これは社会保障、教育投資の厚さの違いだろう。

日本はOECD諸国平均より短い。しかし、京都大学橘木俊詔名誉教授は「格差の大きさより、全体の落ち込みが問題」と指摘する。

低成長で日本の賃金は30年間で所得の低い層の割合が増加した。2018年には年収400万円未満の層は全体の45%を占める。1989年と比して5ポイント増加している。

一方、年収400万円以上の層の全体の割合は低下している。これが「中間層の消滅」である。

聞き込み調査によると、15歳~24歳までの若者に「親世代より経済状況が良くなったか?」聞いたところ、「はい」と答えたのは全体の28%、先進国で最低である。ドイツ54%、米国43%である。

低成長も原因の一つだが、日本の労働生産性の低さも大きな原因である。1時間当たり生産性を各国と比較すると、日本は48ドル、米国、ドイツは70ドル、英国は60ドル、ノルウエーは85ドルである。

さらにGDP比の教育投資の比率は、北欧4%、日本は2.8%である。成長戦略予算の使い道に大きな問題があることは間違いない。

税負担は高いかもしれないが、北欧諸国を見れば「成長なくして分配なしでなく、分配なくして成長なし」が正しいだろう。