社労士・兵藤恵昭の独り言

団塊世代の社会保険労務士・兵藤恵昭のブログです。兵藤社会保険労務士事務所・内容は雑多です

みずほ銀行自宅待機に賠償命令判決

みずほ銀行に勤務していた男性が、約5年も自宅待機を命じられた末、懲戒解雇されたのは違法だとして、同行を相手取って、解雇の無効や慰謝料などを求めていた訴訟の判決で、東京地裁(須賀康太郎裁判長)は4月24日、長期間の自宅待機が違法な退職勧奨にあたるなどとして、330万円の支払いを命じた。

ただし、懲戒解雇は有効と判断し、地位確認と賃金請求は認めなかった。男性側はこの点を不服として控訴する方針だ。

男性は2007年に中途入行。2016年頃から面談で退職を求められるようになり、同年4月に自宅待機を命じられた。その後も、退職をめぐり複数回の面談があり、男性は精神障害を発症した。

2020年頃、みずほから就労継続の意向を尋ねられたり、出社を命じられたりするようになったが、回答しなかったところ、2度の懲戒処分を受け、それでも回答がなかったことから2021年5月に懲戒解雇となった。

東京地裁は、男性がみずほからの就労継続の意思確認などに応じなかったことについて、業務命令違反や欠勤にあたると認定。男性側は正式な謝罪などを求めていたため連絡できなかったなどと反論したが、みずほ側が相応の対応をしているとして退けた。

そのうえで、みずほが懲戒解雇までに段階を踏んで改善の機会を与えていることなどから、解雇は有効だと判断した。

長期間の自宅待機については、「通常想定し難い異常な事態」と指摘。2016年10月には復帰先を提示すべきで、実質的には退職以外の選択肢を与えない状態を続けたとして、「社会通念上許容される限度を超えた違法な退職勧奨」だと認定した。

自宅待機の終期については争いがあり、男性側は2016年4月から解雇までの5年超と主張したが、判決は2021年10月にみずほ側が出社を命じるまでの約4年半と認定した。

解雇無効、地位確認、賃金請求については控訴する方針。控訴審の判決が注目される。

事業所外みなし労働の最高裁判決

職場外での勤務は、事前に決められた時間働いたことにする「みなし労働時間制」の適用対象かが争われた訴訟の上告審判決が16日、最高裁第3小法廷であった。

今崎幸彦裁判長は、みなし制適用を認めず雇用者側に一部残業代の支払いを命じた二審福岡高裁判決を破棄し、審理を差し戻した。

労働基準法は、職場外の勤務について「労働時間が算定し難いとき」はみなし制を適用すると規定する。

判決によると、原告の女性(41)は2016~18年、熊本市監理団体で外国人技能実習生の指導員として勤務し、訪問指導やトラブル対応などを担当していた。

女性は勤務時間がタイムカードによって管理されておらず、訪問先などとともに記した業務日報を団体に提出していた。

二審判決では実習生への確認も可能なため日報の正確性が担保されており、実際に残業代を支払うケースもあったなどとして、団体に計29万円余りの支払いを命じていた。

しかし、今崎裁判長は外国人である実習生に確認する方法の実効性が明らかではないと指摘する。

残業代を支払ったケースでも日報だけを根拠にしていない可能性があり、日報の正確性について十分な検討もされていないなどとし、二審は規定の解釈を誤ったと判断した。

最高裁第3小法廷・今崎幸彦裁判長は、みなし制適用を否定して女性の訴えを一部認めた二審福岡高裁判決を破棄し、審理を差し戻した。高裁の差し戻し審が注目される。

判決文は下記参照のこと。クリックして下さい。

092906_hanrei.pdf (courts.go.jp)

訪問介護事業所の36%が赤字経営!

厚生省は「2022年の訪問介護事業所の平均利益率は7.8%である」と2023年11月公表した。

その中で、介護業22業種の平均利益率は2.4%であり、訪問介護事業所は平均以上の利益率を確保している。これに基づき、2024年4月より介護報酬基本料を引き下げる決定を行った。

国会審議のなかで野党より、訪問介護事業所の利益率分布状況の調査の要求され、今回、その結果が発表された。

それによると、利益率ゼロ%未満赤字経営訪問介護事業所は36.7%を占めた。残りの黒字事業所を含めた平均利益率が7.8%の数字である。

中小訪問介護事業者は、1軒1軒訪問する介護先が主体で、移動費、待ち時間などがあり、効率が悪く、コストが上昇する。

一方で、大規模訪問介護事業所は、サービス付き高齢者向け住宅で、短時間に多くの入居者を効率良く、訪問介護ができるため黒字経営となる実態が明らかになった。

単に机上の計算により、官僚が介護報酬基本料の変更を決定すると大きな過ちが発生することが分かる。訪問介護業界は低賃金で人が集まらない。介護報酬引き下げで、賃金引き上げはさらに困難になる。