社労士・兵藤恵昭の独り言

団塊世代の社会保険労務士・兵藤恵昭のブログです。兵藤社会保険労務士事務所・内容は雑多です

テレワークは定着するか?

「誰のためのテレワーク?・近未来社会の働き方と法」大内伸哉著・明石書店2021年5月発行
 
著者は1963年生まれ、神戸大学大学院法学研究科教授。AI時代の働き方と法、非正規社員改革など「働き方改革」問題に積極的に発言している。
 
コロナ下のテレワークは近年の働き方改革に追加される形で話題である。経営者側は生産性と効率の視点から必要性を問う。従業員側はコロナ感染リスク、社内コミュニケーション、人間関係の視点から必要性と課題を問う。
 
テレワークは小手先のテクニックの問題でなく、テレワークは誰のために行うか?根本から問い直すのが本書の姿勢である。
 
言い換えれば、テレワークは労働者の権利なのか?それとも義務なのか?を問う。
労働は労働者が経営者に労務提供によって対価を得る。労働は対価性を有するため、ノーワーク・ノーペイが原則である。
 
労働は使用者の指示命令下で時間的、場所的制約を受けて労務提供する義務がある。テレワークは使用者の時間的、場所的支配から労働者を一部解放する。
 
デジタルで労務提供のチェック、労働成果の確認は可能である。従来の業務より拘束力と強制力は弱体するのは避けられない。ここにテレワークは権利・義務?の疑問がある。
 
労働契約は対等が基本である。従って、相互に合意できれば、権利と義務が両立する。
 
「テレワークは労働者のワーク・ライフ・バランスの目的達成のために実現されるべきもの。時間と場所の主テレワーク権を労働者が回復して人間的生活を確保することにある」と著者は言う。
 
テレワークは「テレワーク権」としての労働者の権利と言うべきである。現代社会は、ICTの発達、デジタル化の進歩、SDGsの要請から、転勤は当たり前とは言えない時代となった。
 
AI技術の進歩は単純労働の減少をもたらす。従来、会社員が行ってきた社内事務は自動化される。最終的に会社員が消える時代も予想されるだろう。その意味で第二の産業革命である。
 
人口減少社会とDX衝撃が進む中、ワーク・ライフ・バランスを無視することは国家の衰退を意味する。
 
日本はデジタル化の遅れで経済低迷を招いた。働き方改革はテレワークで主導権を使用者から労働者への転換させることが必須である。それによってはじめて最終目的が達成できる。