ゼネスト実施後、関生支部(略称・連帯ユニオン)組合員に対する弾圧、生コン製造業者の共同組織「大阪広域共同組合」との間での「労働基本権」の闘い。生コン価格の安定、賃上げ等労使間、ゼネコンと業者間の過当競争がその背景にあった。
経営側・警察・検察が一体となって、不当労働行為を刑事事件として恐喝罪、強要罪、威力業務妨害罪で89名を逮捕、71名が起訴された。さらに組合幹部に対しては逮捕、起訴を繰返し、1年9ケ月に及ぶ長期拘留を行った。
事件の背景には、経営側・警察・検察に刷り込まれた「組合に在籍していない会社に対する労働争議は存在しない」という間違った思考がある。
産別労組の場合、業界全体の労働者の条件改善求めて、組合員が在籍しない会社に対しても働きかけは認められる。正当な労働交渉権、団結権である。労働事件の刑事事件へのすり替えである。
労働組合法1条は、「労組の団体交渉その他の行為で、対等の立場を促進することによって、労働者の地位向上させる目的達成のための正当なものは、刑法の免責が適用される」と規定する。
日本の労組は企業内組合がほとんどである。企業内組合は加盟労働者のいない労働争議を目的としない。産別労組に対する認識、知識は一般的に乏しい。
実質的に中小企業に労組は存在しない。あるのは産別労組としてのユニオン組織だけである。著者は中小企業向け労組「連帯ユニオン」に対する国家による弾圧と批判する。
事件の経過・事実は大きく報道されない。ネットは愛国ネット、ヘイト集団からの誹謗中傷であふれている。
「報道されない事実は存在しない事実となる」と著者は言う。メディアの責任は大きい。テレビ、大手新聞はゼネコン・不動産会社の広告収入がネック、圧力となり、報道を控える。
書名「賃金破壊」は中労委の審判の経営側準備書面「賃上げという不当な要求に対する損害発生?」という主張から導かれたと思われる。中小企業の労働事件はニュースバリューが少ない。
最近、ジョブ型雇用が注目されている。ジョブ型は産別労組が対応する。産別労組の理解が乏しく、メンバーシップ重視の労組・経営にジョブ型雇用の活用が可能だろうか?
労組に興味ある方、労務管理、労働法に関心ある人は、ぜひこの本を読まれることをお薦めする。