社労士・兵藤恵昭の独り言

団塊世代の社会保険労務士・兵藤恵昭のブログです。兵藤社会保険労務士事務所・内容は雑多です

2023-01-01から1年間の記事一覧

家政婦は労基法適用除外?労災過労死裁判

(労災過労死裁判) 2022年9月29日、過労死で死亡した家政婦の夫(xさん)が、労災適用による給付請求棄却に対する2020年3月本訴取消訴訟に対して、東京地裁が判決をだした。 判決は、「家事使用人は労基法適用除外のために、労災が適用されない」との理由…

免税事業者は消費税を益税として横取りしている?

(消費税は預り金か?) 2023年10月1日よりインボイス制度がスタートした。課税売上高1,000万円以下の中小事業者も課税事業者となるか?否か?の選択を迫られている。課税事業者となれば、消費税を仕入税額控除できるが、消費税分の売上が減少して、納付税額…

国会召集先送り裁判(憲法53条裁判)初めて最高裁判断

(国会召集先送り裁判の最高裁判断) 安倍晋三内閣が2017年、野党が求めた臨時国会の召集に約3カ月間応じなかったのは、臨時国会の召集を定めた憲法53条に反するかどうかが争われた訴訟の上告審判決で、最高裁第3小法廷(長嶺安政裁判長)は2023年9月12日…

制服の着替え時間は労働時間か?

家具小売り大手のイケアの従業員制服着替え時間の賃金未払いがニュースになった。 「工場の門でタイムレコーダーを打刻すれば、そこから労働時間か?」という問題もある。 労働時間であるか、否かは労働者の行為が使用者の指揮命令下にあると客観的に評価で…

2024年施行「改善基準告示」トラック運転手の場合

(「改善基準告示」とは?) 「改善基準告示」とは、トラック、バスおよびタクシー・ハイヤーのドライバーの労働時間に関する基準で、正式名称は、「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」を言います。 改善基準告示は、2022(令和4)年に改正され、…

飲酒運転で懲戒免職、30年間勤務退職金ゼロ・血も涙もない最高裁判決

飲酒運転で懲戒免職となった宮城県立高校の元教諭が、退職金を全額不支給とした県の処分を取り消すよう求めた訴訟の上告審判決が2023年6月27日、最高裁第3小法廷であった。長嶺安政裁判長は3割相当を支給すべきだとした二審判決を変更し、県の処分を妥当と…

令和4年度未払い賃金2万社で79億円に上る!

厚生労働省は令和4年度の労働基準監督署の監督指導結果による未払い賃金の数字を発表した。 それによると、是正指導によって企業から支払われた未払い賃金は計79億円とある。 定期賃金や割増賃金などの不払いが疑われる事業場を調査し、121億円の不払いを確…

再雇用基本給の最高裁判決(2023年7月20日)

(最高裁の方向性) 定年後の再雇用について、仕事の内容が定年前と同じなのに基本給を半額以下にされたことが不当かどうか争われた裁判で、最高裁判所は「不合理かどうかは基本給の性質や支給の目的などを踏まえて検討すべきだ」とする考え方を示した。 正…

性同一性障害者のトイレ使用制限は違法!最高裁判決

(最高裁は違法と判断した!) 経済産業省で働く性同一性障害の職員が、トイレの使用制限を不服として訴えた裁判で、最高裁判所第三小法廷(今崎幸彦裁判長)は使用制限を違法と判断した。二審の東京高等裁判所は、経産省には他の職員が持つ性的な不安も考慮…

「シルバー人材センター委託業務での労働事故」

(2022年9月18日、東京新聞に下記の記事が掲載された。) 「シルバー人材センターから紹介された草刈り中に片目を失明した高齢男性(当時74歳)が安全管理上の不備があるとして提訴し、2022年1月にセンターが和解金を支払っていた。」 センターは会員と雇用…

日本郵政の同一労働同一賃金対応策は正しいか?

(概要) 2023年5月24日、朝日新聞デジタルが日本郵政グループが、2020年10月最高裁での同一労働同一賃金違反判決に対する対応策の報道があった。 それによると、日本郵政グループの最大労組であるJP労組(組合員23万人)との間で、正社員と期間雇用社員との…

「三位一体労働市場改革の論点案」

2023年4月12日、労働移動促進による経済成長を目指す内閣官房・新しい資本主義実現本部事務局が『三位一体労働市場改革の論点案』を公表した。 その後、今後の労働政策の方向性を示した報告書が、労働政策審議会労働政策基本部会より発表された。これによっ…

未成年者の犯罪行為、親に損害賠償請求される?

(銀座強盗事件) 先日起きた銀座ロレックス専門店強盗事件の犯人は、未成年者、なかには高校生もいたと報道されています。 元警察官で犯罪ジャーナリストの小川泰平氏が、9日、TBS系「ゴゴスマ」に出演、被害額の損害賠償について解説している。 アナウンサ…

従業員合意ある就業規則の不利益変更を無効とした最高裁判例

(事件の概要) 平成28年2月19日最高裁判例・山梨県民信用組合事件 従業員の自由な意思が存在しないとして、退職金規程の不利益変更に対する同意が無効と判断された。(被告・山梨県民信用組合、原告・管理職及び職員組合員) 平成15年1月に被告に合併(15年…

「アイドル」は労働者か?個人事業者か?

アイドルグループを脱退した男性に対し、芸能事務所が違約金の支払いを求めていた訴訟で大阪地裁は2023年4月21日、違約金は無効との判決を出しました。 判決は労働基準法に違反するとのことです。今回は労働基準法の労働者性と、違約金規定について考えます…

パワハラによる消防士の分限免職処分を認める最高裁判例

部下にパワハラを繰り返したとして分限免職処分を受けた山口県長門市消防本部の元消防司令補の40代の男性が、同市に処分取り消しを求めた訴訟で、最高裁第3小法廷は、二審・広島高裁判決を破棄し、男性側の請求を棄却した。 一、二審はいずれも処分を違法と…

今年の春闘・賃上げ、中小企業まで波及するか?

(今年の春闘の動き) 春季労使交渉の集中回答日を迎え、改めて賃上げ機運の高まりが明らかになった。 金属労協の先行大手では満額回答が続出し、賃金改善額の単純平均は8000円を超えた。 流通大手など多様な産業・業種の労組で構成する最大産別UAゼンセン…

インボイス制度がフリーランスを追いつめる!

(インボイス制度とは?) 2023年10月以降、インボイス制度が開始される。インボイスとは「公定請求書」であり、これが無いと取引先は仕入消費税の控除ができない。フリーランスとの取引で相手方の消費税を肩代わりしなくてはならなくなる。 適格請求書、適…

管理監督者の残業代支払不要の要件

管理監督者については、三つの判断要素があります。 その判断基準を満たしていない場合、管理職であっても労働時間などの規定が適用され、時間外手当や休日出勤手当を支払う必要が生じます。 (判断要素とは) 経営者から管理監督、指揮命令にかかる一定の権…

トラック運転手残業手当で会社側敗訴、最高裁審理差し戻し

(最高裁の結果) 残業の多寡によって賃金総額が変わらない仕組みの適法性が争われた裁判で、最高裁判所第二小法廷(草野耕一裁判長)は3月10日、一部を適法な残業代と認めた二審判決を破棄し、審理を福岡高等裁判所に差し戻した。 (裁判所の判断) 「新給…

令和4年10月、後期高齢者窓口負担割合が変更となった!

(今回の法律改正のポイント) 令和4年10月1日から、現役並み所得者を除き、75歳以上の方等で一定以上の所得がある方は、医療費の窓口負担割合が1割から2割に変わります。また、窓口負担割合が2割となる方には、外来の負担増加額を月3,000円までに抑える配慮…

中小企業2023年4月から、月60時間超の時間外割増賃金率が50%へ引き上げ!

2023年4月からは中小企業を含むすべての企業において、月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が50%となる。対応しないと法的に罰せられる可能性もあるため、各社は長時間の時間外労働を減らすために業務効率化などの対策が必要となる。 中小企業の月60時…

懲戒解雇処分該当として、支給済み退職金を返還できるか?

本件は、退職金支給後に、背信行為として懲戒解雇処分に該当したと判断し、会社が退職金返還請求をした事件である。(東京地裁・令和4年6月10日判決) (事件の概要) 本件の原告は生命保険会社(Ⅹ生命)で、被告となった元社員2名(婚姻関係あり)は、いず…

生保外交員の経費の給与天引きを違法とした判例。

営業で使用する携帯電話や訪問先に配る品などの費用を給料から天引きするのは違法であるとして、住友生命京都支社の保険外交員の50代の女性が天引き分の支払いを求めていた訴訟で、京都地裁が約35万円の支払いを命じた。 同社では顧客に保険商品を紹介す…

自由律俳人・尾崎放哉・寂寥感の人生

「海も暮れきる」吉村昭著・講談社文庫2011年5月発行 本書は口語自由律俳人・尾崎放哉の小説。肺結核の放哉は最後の死に場所として小豆島を目指した。大正14年8月、小豆島に到着する。 放哉が小豆島霊場58番札所・西光寺奥の院「南郷庵」の庵主として翌年4月…