(銀座強盗事件)
先日起きた銀座ロレックス専門店強盗事件の犯人は、未成年者、なかには高校生もいたと報道されています。
元警察官で犯罪ジャーナリストの小川泰平氏が、9日、TBS系「ゴゴスマ」に出演、被害額の損害賠償について解説している。
アナウンサー石井亮次から、「親が賠償責任を負うという話もあるわけでしょう?」と過去の事例について問われると、小川氏は「逮捕され、罰せられるのはもちろんですけど、少年ですから、本人がお金がなくても親に1億円相当の賠償金がくる」と説明。
「こういう事件を実際に扱ったことがありますけど、自分たちが住んでいる自宅とかマンションを売却して、損害賠償に応じて、それでも足らなかったケースも実際あります」と実例を挙げて話し、「自分が罪を償えばいいという問題でもない」と犯行を一刀両断した。犯罪防止のため、誇張的発言も已む得ないとは言え、法的には必ずしも正しいとは言えない。
(犯罪者が未成年の場合、親の賠償責任)
子どもが未成年の場合には、親が子どもの言動の責任を負うことになるケースがある。それについては、事故でも事件でも同じです。
たとえば民法第712条では、子どもに「責任能力がない場合」には、子ども自身は何らの法律上の責任を負わないと定められています。その場合、未成年者を監督する義務を負う者(通常は親権者である親)が、子どもによる行動の結果について、法的責任を負うことになります。(民法714条)
ただし、親の責任が発生するための要件も定められています。
(親に賠償責任が発生する要件)
(法的根拠)
つまり、「親に監督義務違反が認められ、同義務違反が不法行為上の義務違反と評価できて、同義務違反と損害との間に因果関係が認められる場合」にかぎり、親自身にも責任が発生すると考えられます。(民法第709条)
ただし、これはあくまで民法第709条における一般不法行為の適用の問題となります。
(因果関係・責任能力・立証責任)
親の監督義務違反についても損害賠償請求をする側が主張立証する必要があるという点では、民法第714条(子供に責任能力が無い場合の親の責任)の適用を受ける場面と大きな違いがあると考えられます
つまり、民法第712条で、未成年が「責任能力がない場合」には、未成年者は法律上の責任を負わないとなっています。その代わりに、民法第714条1項により、当該未成年者を監督する責任を負う者が賠償責任を負うものとされているのです。
罪を犯した子どもが未成年ではあっても、責任能力は十分に備えているというケースは少なくありません。そのときは、事情が異なります。
民法714条はあくまで未成年者が責任能力を備えていない場合の規定なので、未成年者でも責任能力を備えている場合には民法714条の適用はできないと考えられます。
したがって、原則として当該未成年者自身が損害賠償責任を負うということになります。
(結論)
即ち、親に監督義務違反が認められ、その義務違反と損害との間に因果関係がある場合は、親が責任を負うことになります(法709条・不法行為による損害賠償)
刑事責任は民法の規定とは全く別です。現在の少年法は未成年であっても、14歳未満の場合を除いて、処罰手続きは同じです。また16歳以上は、成年と同じ刑事罰が適用されます。