社労士・兵藤恵昭の独り言

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トラック運転手残業手当で会社側敗訴、最高裁審理差し戻し

最高裁の結果)

残業の多寡によって賃金総額が変わらない仕組みの適法性が争われた裁判で、最高裁判所第二小法廷(草野耕一裁判長)は3月10日、一部を適法な残業代と認めた二審判決を破棄し、審理を福岡高等裁判所に差し戻した。

(裁判所の判断)

「新給与体系は、その実質において、時間外労働等の有無やその多寡と直接関係なく決定される賃金総額を超えて労働基準法37条の割増賃金が生じないようにすべく、旧給与体系の下においては通常の労働時間の賃金に当たる基本歩合給として支払われていた賃金の一部につき、名目のみを本件割増賃金に置き換えて支払うことを内容とする賃金体系であるというべきである。

そうすると、本件割増賃金は、その一部に時間外労働等に対する対価として支払われているものを含むとしても、通常の労働時間の賃金として支払われるべき部分をも相当程度含んでいるものと解さざるを得ない」と裁判所は判断した。

従って、適法な残業代支払いというためには、割増賃金全体が残業の対価になっているかを検証すべきであり、その点に関する審理が不十分と判断した。

(事件の概要)

裁判はトラック運転者が平成27年12月から2年分の残業代支払いを求めたもの。会社は27年5月に賃金総額をあらかじめ決め、賃金総額から基本給を引いた額を「割増賃金」として支給する賃金制度を採用。割増賃金はさらに「時間外手当」と「調整手当」に分かれ、時間外手当は基本給を通常の労働時間の賃金として、労働基準法所定の方法により算出した額、調整手当は割増賃金から時間外手当を引いた額としていた。

残業が増えると時間外手当も増えるが、調整手当がその分減るため、結果的に残業の多寡で賃金総額が変わらない仕組みとなっていた。

二審は時間外手当を適法な残業代支払いと認める一方、調整手当は適法と認めていなかった。最高裁は時間外手当を適法な残業代と認めた二審判決を破棄し、審理を福岡高裁に差し戻している。

簡単に言えば、携帯電話の使い放題プランのような賃金制度は無効で、使った分量に応じて支払う従量課金のような賃金制度しか許されないということだろう。

判決文は下記のとおり。

091858_hanrei.pdf (courts.go.jp)